箕輪のひと

子ども達の登校時、たま~にひとりのお年寄りに会うことがある。その人は

銚子丸の角から杖をつきながらゆっくりと姿を現し、決まって高架下の手すりに体を預けしばらく休憩する。

その日は小中の夏休みが終わって二日目のこと。まだ8月なのに登校している様子を不思議がって、私に話しかけてきた。2学期制になったので、9月始まりではなくなったと説明すると、「今の子ども達はいいなぁ、羨ましいよ」とポツリ。どうしてかと聞くと、「こうやって平坦でまっすぐな道でさ、学校もすぐ近くにあるし」と・・・。

 

聞けば、昔その人が子どもの時は山の中を1時間以上かけて歩いて小学校に通っていたそう。時々黒く大きなものが眼の前をザッと横切る。それはイノシシだったと笑う。「猪だけでなくいろんな動物と出くわしたよ。山をぐるっと回って帰るともっと時間がかかってね、家に着く頃には真っ暗だよ。小さかったけど不思議と怖いと思ったことはなかったよ・・・」

自 分が子どもだった遠い遠い昔の話・・・、80歳近い?その人はついこの前の出来事のように話してくれる。鮮明に記憶に刻み込まれているのだろう。いつもは ちょっとぶっきらぼうな感じで挨拶だけですれ違うのに、この日は目を細めながらたくさん話を聞かせてくれた。小さな男の子が棒ッ切れを振り回しながら、楽 しそうに山の中を歩いている姿を私も見た気がした。

 

9月19日は敬老の日、箕輪町もお祝いの会が開かれる。その人は参加されるだろうか?

箕輪の人・・これからもずっとずっとお元気で、と願わずにはいられない。

ほっこりと心が温まる、そんな朝の嬉しい出会いだった。

                                RIKO

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